TOPICS トピックス

2022.11.13

お知らせ

【動画&レポート公開】#49デジタル社会のパスポート、マイナンバーカードの現在地と将来像 (9/21開催)

2022年9月21(水)に開催されました「GLOCOM六本木会議オンライン#49デジタル社会のパスポート、マイナンバーカードの現在地と将来像 」のアーカイブ動画とレポートを公開いたします。

登壇者(敬称略)

  • 上仮屋尚(デジタル庁統括官付参事官(戦略企画、国民向けサービスG総括)
  • 前川徹(東京通信大学 情報マネジメント学部 教授/国際大学GLOCOM主幹研究員)★モデレーター

イベントレポート

概要

 政府は、誰もが安全に、自分にあった行政サービス、民間サービスをオンラインで享受することができる、魅力あるデジタル社会の実現を目指している。その基盤となるのがオンラインで自分を証明できる、デジタル社会のパスポート、マイナンバーカードである。現在では国民の約半数がマイナンバーカードを取得しており、行政サービスや民間サービスの間で利活用シーンは拡大している。デジタル庁は、「オンライン市役所サービス」、「市民カード化」、「安全・便利なオンライン取引」を三本柱としてユースケース拡充に取り組み、マイナンバーカードの持つ本人確認・認証機能がデジタル社会の基盤として徹底的に利活用されることを目指している。

1. 上仮屋尚氏による発表

◇マイナンバーカードとは
 マイナンバーカードは、これからの時代の本人確認ツールであり、表面には顔写真や氏名住所の記載があって対面での本人確認に用いることができる。裏面にはICチップがあり、電子的な本人確認が可能になっているほか、ICチップの空き領域を利用したアプリケーションの提供など、民間も含めて幅広く利用可能なものとなっている。
 安全性を不安視するような話題がよくあるが、顔写真があるため対面での悪用は困難である。また、マイナンバーを利用する際には本人確認書類を用いた本人確認があるのでマイナンバーを知られても悪用は困難であるし、ICチップ部分にはプライバシー性の高い個人情報は記録されていない。
 マイナンバーカードに格納される公的個人認証サービスには、インターネットで電子文書を送信する際などに文書が改ざんされていないか確認することに用いる署名用電子証明書と、インターネットを閲覧する際などに利用者本人であることのみを証明する利用者証明用電子証明書がある。いずれの場合も、デバイスでマイナンバーカードを読み込んで利用することができ、オンライン社会での取引を円滑かつスピーディーなものにしている。
 例えば金融機関等の口座開設の場合、従来では対面や郵送による紙ベースでの本人確認が必要であり、コストやタイムラグ、改ざんのリスクがあったが、公的個人認証サービスを用いると、デジタルで安全かつスピーディーに口座を開設することができる。

マイナンバーカードのICチップ内の空き領域にカードアプリケーションを搭載してサービスに利用する例としては、職員証として出退勤管理やPCログイン認証に使うなどがあり、セキュリティの高いマイナンバーカードに複数のサービスを集約できる。健康保険証や運転免許証としての利用や、民間サービスでの本人確認、マイナポータルなど、マイナンバーカードの利活用シーンは拡大している。
◇カード利用シーン拡大構想
 現在では国民の約半数がマイナンバーカードを申請済みであり、閣議決定において今年度中にほぼすべての国民に行き渡らせることを目指している。また、閣議決定では「オンライン市役所サービス」、「市民カード化」、「安全・便利なオンライン取引」を三本柱として利活用拡大に取り組むとしている。
 オンライン市役所サービスとは、引っ越しや子育て、介護、災害に関する手続きなど、従来では市役所に行かなければならなかった手続きをオンラインで完結可能にする構想である。引っ越しや子育てなどの一部手続きは今年度中に全自治体対応を目指しており、特に、子育てや介護に関連する31個の手続きを重要視して順次拡大する予定である。市町村から住民へお知らせを届ける試みも進んでいる。
 オンライン市役所サービスでは、オンライン申請などのサービスを提供するマイナポータルが鍵となる。マイナポータルで提供する機能を行政機関だけでなく民間組織に対してもAPIとして提供することで新たなサービスの開発につながることが期待される。例えば、ミライロの障害者手帳アプリはマイナポータルと連携することで、障害者手帳を持ち歩かなくてもスマートフォンにて信頼性の高い情報として事業者に提示できるサービスを提供している。同様に、医療機関でのAPI連携も進んでいる。また、確定申告において各データの自動入力化が進んだり、国民年金保険料の免除申請がマイナポータルからできるようになったりするなど、各種手続きの簡便化が進んでいる。
 市民カード化とは、マイナンバーカード1枚で様々な市役所サービスが受けられる社会を作るという構想を指す。例えば健康保険証としての利用があり、電子証明書を用いた資格情報の確認が行われるような仕組みである。運転免許証としての利用も令和6年度末から開始されることになり、免許証に対して住所変更手続きを個別に行う必要がなくなる。
 安全・便利なオンライン取引という構想では、電子証明書利用を当面無料にするなど、民間サービスでの利用拡大を図っている。スマートフォンにマイナンバーカード機能を搭載することで、公的認証サービスのユースケース拡大促進を目指しており、アンドロイド端末へは令和4年までに搭載予定であり、iPhoneについても早期実現を目指している。
 民間サービスでの利用拡大が進み、例えば金融機関が公的認証サービスを利用して本人確認を行う場合に、同意を得ることにより住所などの顧客情報をいつでもオンラインで最新化できるようになる。
 実際の民間利用事例としては、auカブコム証券の新規証券口座開設時のマイナンバー取得及び本人確認や、メルペイの銀行口座との連携時の本人確認、三菱UFJ銀行による住宅ローン契約手続きの電子化、アイシングループによる従業員の給与管理、日本医師会のHPKIカードの申請等がある。厳格な本人確認が求められる場面では、公的個人認証サービスを利用することでより確実でスピーディーな本人確認が可能になるというメリットがある。また、群馬県前橋市ではSuicaとマイナンバーカードを連携し、Suicaで様々な市民サービスを受けられるようにするという独自の取り組みがある。

 

2. 質疑応答・ディスカッション

前川氏:スマートフォン搭載について、令和4年までにアンドロイド端末に搭載というのは、すべての機種に対応しているのか。
上仮屋氏:すべての機種と考えて問題ない。

前川氏:自治体によってマイナンバーカードの普及率が異なるのはなぜか。
上仮屋氏:普及率の高い自治体では独自のポイントなどの利活用を進めていたり、夜間受付や出張申請等、カード取得のサポートを手厚く行っていたりしている。

– マイナポータルを使って介護福祉系の手続きが可能でも、添付書類を郵送するという運用がされている自治体があるが、このような非効率は解消されていくか。
上仮屋氏:APIなどを用いて行政機関や民間組織とデータ連携し、郵送の必要性はなくしていきたい。

– スマートフォンに搭載されるとカードを発行しなくてもよくなるのか。
上仮屋氏:スマートフォンでカードを読み込むという制度設計なのでカードは発行する必要がある。ただし、一度取り込んでしまえばカードを持ち歩く必要はなくなる。

– スマートフォンを機種変更する際にデータの消去や引継ぎはどうなるのか。
上仮屋氏:問題なくデータの消去・引継ぎができる設計になっている。例えばマイナンバーカードを取り込んだスマートフォンが中古品として第三者の手にわたってもそこから個人情報が引き出されることはない。

前川氏:民間企業のための電子証明書の利用料が当面無料とあったが、いずれ有償に戻るのであれば民間企業にとってリスクになるのではないか。
上仮屋氏:受益者負担の原則が前提であるので恒久的に無償提供というのは難しい。
前川氏:利用者が増えれば有償化する際の金額は低くなるか。
上仮屋氏:まさにその通りで、利用者数を拡大することで利用料金を低くする構想がある。

– マイナポイントを1億人が申請するとそれだけで2兆円という金額になるが、それだけの金額をかけるそのメリットはあるのか。
上仮屋氏:よく指摘されるが、誤解が生じていると思われる。マイナポイントの第一目的は、第1弾においては消費税増税の反動減対策であり、第2弾は景気刺激策である。マイナンバーカードの普及や利用登録の促進は副次的なものであるとご理解いただきたい。

執筆:田邊新之助(GLOCOMリサーチアシスタント)

 

登壇者プロフィール

上仮屋尚(デジタル庁統括官付参事官(戦略企画、国民向けサービスG総括)
平成6年 東京大学法学部卒 総務省(旧自治省)入省
平成25年まで春日井市、京都市、広島県、宮城県、国土庁、内閣官房、総務省で勤務
平成26年よりマイナンバー制度に関わる(総務省、J-Lis、内閣官房・内閣府)
令和3年9月より現職(デジタル庁統括官付参事官(戦略企画、国民向けサービスG総括))

前川徹(東京通信大学 情報マネジメント学部 教授/GLOCOM主幹研究員
1978年通商産業省入省、機械情報産業局情報政策企画室長、JETRO NYセンター産業用電子機器部長、IPAセキュリティセンター所長、早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員教授(専任扱い)、富士通総研経済研究所主任研究員、サイバー大学IT総合学部教授等を経て、2018年4月から東京通信大学情報マネジメント学部教授、この間、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事、国際大学GLOCOM所長などを兼務。

 

※本セッションは、2022年9月21日(水)Zoomウェビナー形式で、事前参加登録をしたリモート参加者約100名にライブ配信されました。

GLOCOM六本木会議オンラインでは、今後も継続して、旬なテーマをピックアップし、セッションを開催してまいります。各回のセッションの収録動画は、Youtubeチャンネルにアップし、アーカイブ化することで、いつでもご覧いただけます。
また、GLOCOM六本木会議ウェブサイト(https://roppongi-kaigi.org/)より、事前参加登録をされた皆さまには、Zoomウェビナーを介してライブでもご視聴いただけます。