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2022.07.25

お知らせ

【動画&レポート公開】#45 デジタル臨時行政調査会によるアナログ規制の一括見直し(7/7開催)

2022年7月7日(木)に開催されました「GLOCOM六本木会議オンライン#45 デジタル臨時行政調査会によるアナログ規制の一括見直し」の収録動画とレポートを公開いたします。

※公開許諾期間が経過したため、本イベント動画の配信は終了いたしました。(2023年7月7日 事務局追記)

イベントレポート

概要

 この講演では、2021年11月に設置されたデジタル臨時行政調査会におけるアナログ規制の見直しについて、デジタル庁副大臣を座長として開催した作業部会も含めて議論の経緯を振り返るとともに、2022年6月3日に決定した「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」の内容や意義について具体例を交えた解説と、今後3年間の「集中改革期間」における見直しの方針・スケジュール等が紹介された。デジタル臨時行政調査会はその立ち上げから半年間で、約1万の法令を総点検し、約4000条項の見直し方針を確定した。残る法令の条項や3万の通知、通達も含めて見直しを進め、社会のデジタル化を阻むアナログ的規制を3年間で一掃する予定である。今後の経済成長にはデジタルの力を十分に活かすことのできる社会制度への転換が不可欠であり、デジタル臨調は引き続き①同種の規制を一括して見直す『面の改革』、②技術の進展に即した『テクノロジーベースの改革』、③未来の法令を念頭に置いた『将来の改革』の3つを掲げてスピードを最優先に実行していく。

1. 大澤健氏による発表

◇デジタル臨時行政調査会によるアナログ規制の一括見直し
 デジタル臨調では初めに構造改革のためのデジタル原則を定めた。これはデジタル改革、規制改革、行政改革の3つの改革に通底する原則であり、例えば書面、目視、常駐、実地参加等を義務付ける手続・業務をデジタル処理で完結させることや、官民でデータを共有し、システム間の相互運用性を確保することなどを定めている。
 デジタル原則に照らし合わせて約1万の法令を点検したところ、アナログ規制を定める条項が約5000個存在することが判明した。それらの条項を、規制の種類による類型化と、デジタル化の進捗を3段階に分けたフェーズの考え方を用いて分類することで一括見直しを可能にした。例えばアナログ規制には、目視規制、実地監査規制、定期検査・点検規制、書面掲示規制、常駐・専任規制、対面講習規制、往訪閲覧縦覧規制の7つの典型的な項目がある。

 日本経済の成長、所得の伸び悩みの最大の原因の1つにデジタル化の遅れがあるため、アナログ的な規制を横断的に一括して見直しを行う必要がある。デジタル臨調は、①同種の規制を一括して見直す『面の改革』、②技術の進展に即した『テクノロジーベースの改革』、③未来の法令を念頭に置いた『将来の改革』の3つの特徴を持つこれまでにない規制改革を実施する。
 実際にどのように見直しが進められているのか、目視・実地監査規制について見てみると、一定の基準への適合性を判定するもの、実態・動向などを明確化するもの、監視を行うものの3つに類型化し、目視・実地監査規制になっているものをフェーズ1、情報収集を遠隔化して人によって評価するものをフェーズ2、判断の精緻化、自動化・無人化がされているものをフェーズ3としてフェーズ分けして、現状のフェーズと見直し後のフェーズを調整している。
 こうした類型・フェーズに基づいてデジタル臨調と各府省庁が連携して点検・見直しを実施し、約4000条項の見直し方針を確定し、リストにまとめられている。それ以外の条項についても、年内に方針が確定する予定になっている。これまでのアドホックな対応では年間で数10件から100件程度の見直しであったことと比較して非常に速くなっている。
 目視・実地監査規制の点検・見直しが行われた例として、河川法の見直しが挙げられる。河川法では、河川の点検は目視でしなければならないと定められているが、ドローンなどを用いて画像を撮影してマッピングや危険予測に使うことができれば点検の高度化・効率化を図ることが可能になると見直した。これはフェーズ1からフェーズ3の見直しにあたり、河川延長約12,000kmにわたる範囲を目視で点検していたものを自動化することで大きな効果が見込める。
 常駐・専任規制の点検・見直しが行われた例としては介護サービスがある。常駐規制は物理的に常に事業所や現場にとどまることを求める規制を指し、専任規制は職務の従事や事業所への所属等について、兼務せず、専らその任にあたることを求める規制を指す。これらの規制はビデオ会議などのツールを用いることで緩和可能である。介護サービス事業所における管理者の常駐規制については、利用者のサービスに直接関わらない業務はテレワークの取扱いを明示するなどの検討を行った。
 その他にも、建設業法における建設業者の提出書類を、役所等へ訪問せず電子システムで申請書類閲覧可能にしたり、事業所に置かれる安全運転管理者等に対する講習の申込・手数料納入から受講、受講証明書発行までをデジタル完結できるようにしたりといった見直しが行われている。
 デジタル臨調では作業部会にて11回のヒアリングを実施し、デジタル技術と規制の見直し事項の対応関係を整理したテクノロジーマップを整備し活用して規制を見直し、成長産業の創出にも寄与している。
 日本経済団体連合会等を中心に経済界から、電子官報の実現や申請・届出等のオンライン化など、約1,900件の要望等を受領している。デジタル原則やテーマに基づき類型化した上で、先行事例を構築できた類型から、各府省庁に自主点検の実施等を依頼し、同様の規制があれば一括的な見直しを行う。主な経済界要望等については令和4年末を目途に見直し方針を決定、公表する予定である。
 国民生活に密接に関連する行政サービスの多くは地方公共団体が実施しているため、デジタル臨調における国の法令等の点検・見直し作業の状況を踏まえ、令和4年12月末までに、以下の内容を含む地方公共団体向けのマニュアル等を公表し、地方公共団体の取り組みを支援していく。
 また、デジタル臨調は法令等のデジタル原則適合性を自律的かつ効率的に確認できる体制及びプロセスの構築を目指している。具体的な方向性としては、まず、政策企画の早い段階から各府省庁が自律的に考慮できる指針をデジタル庁が策定する。次に、デジタル原則適合性確認プロセスを立法プロセス等へ組み込み、新規立案や既存法令についてデジタル庁が確認・点検する。そして、各府省庁が執行に向けたシステム、手続きフロー体制を事前にすりあわせられるプロセスを設計・制度化する。ほかにも、法令事務の誤りを防止し効率化を図るために、法令データのデジタル正本の提供体制の確立を目指すという取り組みもしている。
 今後の見通しとしては、2022年7月から2025年6月までの3年間を集中改革期間と位置づけて、規制の一括見直しプランを進め、社会全体のデジタル化を進めていく予定である。

 

2. 質疑応答・ディスカッション

前川氏:規制ではなく慣例でアナログになっているものも中にはあると思われるが、そういったものに対する見直しはどのように進んでいくのか。
大澤氏:一見慣例と思われるものでも、掘り下げていくと根拠となるものが存在する。その根拠は法令や通知通達であったり、国会答弁の内容であったりする。なので、まずはその根拠となるものを特定する作業を重要視している。

前川氏:様々な書類がPDFで公開されているが、PDFは人間の目には読みやすいがコンピュータで自動処理するには扱いづらい。xmlのような、コンピュータで処理しやすいファイル形式で作った方が良いのではないか。
大澤氏:共通基盤利用原則にベースレジストリの記載があるように、共通に使えるようなデータベースの整備を目指しており、使いやすいデータを提供できるように進めている。

- あげられた事例の大半はアナログで行われていることをそのままデジタルに置き換えているだけに見える。それも重要だが、行政、デジタルにあった形に変えていくことを模索すべきではないか。
大澤氏:その通りだと思う。デジタル化を目的ではなく手段として捉えて法律や業務の見直しを進めている。

- デジタル庁は府省庁や自治体に対して、「アナログ規制をデジタル化せよ」という姿勢をとっていると感じた。府省庁や自治体に寄り添わないと協力を得られないのではないか。
大澤氏:その通りだと思う。各省庁や地方自治体がデジタル化を進めている中で、それをうまく後押しできないかという観点で調整をするようにしている。基本的には我々の方から一方的に指示をしたり依頼したりすることではないと考えている。

- デジタル技術を活用することで廃止できた規制はあるのか。
大澤氏:例えば定期的に点検しなければいけないものを、センサーなどの技術を使ってモニタリングすることで点検の廃止を実現できると思う。人の目で見て人が判断することを少なくしていくことが必要だと考えている。

- デジタル庁のデジタル化方針が妥当なのか否かを、政策的、技術的な観点で評価する仕組みはあるか。
大澤氏:例えば紹介した目視の点検の例の場合だと、安全性が確保されるようなレベルに技術が追い付いているのかということについて技術検証をして規制の見直しをする必要があると思っている。4000条項の見直しについても、これから技術検証をして効率性と安産性を同時に追求していく必要がある。

- 本当にできるのか。慣習や利権の絡む話なので心配に思う。
大澤氏:数が多いという意味では大変な見直しになるが、各省庁がよく考えて前向きに取り組んでいるので心配はしていない。

- 業務の現場ではアナログのやり方が当たり前になっていてデジタルでは対応できないと思われていることが多いのではないか。また、改革に消極的な人もいるだろうが、そのような意識の改革は可能か。
大澤氏:改革を強制することはできないので、デジタル化の成功例を積み重ねて進むべき道を可視化して理解を得られるようにしていくことが必要だと考えている。
前川氏:実際に現場に行って話を聞くと、現状を変えたいと思っている人は多くいるのでうまくいくように思う。

- 場合によっては各省庁の所管法や設置法に手を加えないといけないような困難な課題であると思う。
大澤氏:まさにその通りで所管法を改正することが必要になってくる。その際にアドホックな取り組みにならないように注意しなければならない。

- 省庁を超え地方自治体も含めた合理化には、国民的議論による方向性の確立が必要かと思う。
大澤氏:地方自治体にも主体的に動いてもらうためにマニュアルを作って浸透させていくということがある。また、今回の事務局に参加している地方自治体の方が各自治体に戻ったときに取り組みを推進してもらうといったことも含めてやっていく必要がある。国民的議論については、おそらく改正案を作ったタイミングでパブリックコメントを行うことになる。

執筆:田邊新之助(GLOCOMリサーチアシスタント)

 

登壇者プロフィール

大澤健(デジタル庁戦略・組織グループ参事官)
2000年、東京大学経済学部卒業後、郵政省(現総務省)入省。電気通信事業法や放送法など情報通信関連の制度の企画立案に従事。在英国日本国大使館一等書記官、総務省国際放送推進室長、総務大臣秘書官等を経て、2020年9月、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室企画官として、デジタル改革関連法案の立案を担当。2021年9月のデジタル庁創設とともに現職に就任。2022年2月からデジタル臨時行政調査会事務局併任。

前川徹(東京通信大学 情報マネジメント学部 教授/GLOCOM主幹研究員
1978年通商産業省入省、機械情報産業局情報政策企画室長、JETRO NYセンター産業用電子機器部長、IPAセキュリティセンター所長、早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員教授(専任扱い)、富士通総研経済研究所主任研究員、サイバー大学IT総合学部教授等を経て、2018年4月から東京通信大学情報マネジメント学部教授、この間、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事、国際大学GLOCOM所長などを兼務。

 

※本セッションは、2022年7月7日(木)Zoomウェビナー形式で、事前参加登録をしたリモート参加者約80名にライブ配信されました。

GLOCOM六本木会議オンラインでは、今後も継続して、旬なテーマをピックアップし、セッションを開催してまいります。各回のセッションの収録動画は、Youtubeチャンネルにアップし、アーカイブ化することで、いつでもご覧いただけます。
また、GLOCOM六本木会議ウェブサイト(https://roppongi-kaigi.org/)より、事前参加登録をされた皆さまには、Zoomウェビナーを介してライブでもご視聴いただけます。