2020.06.16
お知らせ
2020年6月13日(土)、オンライン企画第1弾のライブ配信イベント「GLOCOM六本木会議オンライン #1 接触確認アプリとはなにか ~データ活用時代の新たな公衆衛生を考える~」が開催されました。ここに当日の収録動画および資料を共有・公開いたします。
※本セッションは、2020年6月13日(土)無観客講演のスタイルで、事前参加登録をしたリモート参加者200名程にライブ配信されました。
※当日、ライブ配信の開始時間が遅延したことにより、動画内で進行の変更に関する言及がある点をご容赦ください。
※通信環境の状況により、リモートからの登壇者の音声が一部聞き取りにくい箇所がございます。ご了承ください。
動画中に紹介されたスライド文書は、セッション終了後に、登壇者によって文書のとりまとめが行われ、ver.1.0が完成しました。
「新型コロナウイルス接触確認アプリについて-特徴と期待されること-」2020/06/15 ver.1.0
「接触確認アプリとはなにか ~データ活用時代の新たな公衆衛生を考える~」
新型コロナウイルス感染症対策の一環として、政府は「接触確認アプリ」の開発と導入を準備している。一方で、AppleやGoogleが推進する”Exposure Notification”との関係や、プライバシーへの懸念、さらには政府の役割や民間との連携のあり方等、多くの論点がある。このセッションでは、接触確認アプリが目指す理念や構造を踏まえながら、このアプリの詳細を検討する政府の有識者検討会メンバーを交えた議論を通じて、データ活用時代の新たな公衆衛生の在り方を展望する。
■落合 孝文(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 パートナー弁護士)
■クロサカ タツヤ(株式会社企 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授/国際大学GLOCOM客員研究員)★モデレーター
■庄司 昌彦(武蔵大学 社会学部教授/国際大学GLOCOM 主幹研究員)
■藤田 卓仙(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センタープロジェクト長)
■村井 純(慶應義塾大学教授 / 慶應義塾大学サイバー文明研究センター共同センター長)
■山本 龍彦(慶應義塾大学法科大学院法務研究科教授)
挨拶:渡辺智暁(国際大学GLOCOM主幹研究員/教授/研究部長)
進行:小林奈穂(GLOCOM六本木会議 事務局長/国際大学GLOCOM主任研究員)
協力:株式会社インプレス/INTERNET Watch、株式会社ブレイン
セッションでは、まず「接触確認アプリとは何か」をテーマに、このアプリを使うメリットについて議論が展開されました。接触確認アプリの機能とは、接触確認アプリを使用すると、同じように接触確認アプリを使用している人と接触があった場合に、スマートフォンが自動で記録するものであること、そして14日以内に濃厚接触が記録された人が新型コロナウイルスに感染した場合には、そのことが通知されることが説明されました。そして、アプリ利用の第1のメリットは、利用者本人にあること、その理由は利用者が自分の行動を把握することで、自ら積極的に検査を受けに行くといった必要な行動変容ができることが挙げられました。また、そうした行動が、家族など身近な周囲の人たちを守り、やがては公衆衛生につながっていくという考え方が示されました。
また、度々指摘される個人のプライバシーへの懸念に対しては、接触確認アプリの提供者、サーバー側では個人が特定できる情報は一切記録されないこと、感染者との接触が確認された際の通知とは、感染者である誰か(氏名等の情報は秘匿される)との濃厚接触があった事実だけを伝えるものであり、感染者が誰かを知らせるものではないことが説明されました。また、アプリから収集される個人の接触履歴データは、ビジネス目的ではなく、人間の健康のために使われるという点で、新たなデータアーキテクチャを構築しようとするものであることへの理解が求められることも示されました。
接触確認アプリの効用を最大化するためには、まずは普及率を上げることが重要であり、そのための方法論として、立法の必要性が指摘されました。ただし、立法には時間を要するため、国会でもあらかじめ議論を進めておくべきだとのコメントも出されました。
また、引き続き、クラスター発生が懸念されるイベント・ライブ会場や接客を伴う飲食業などにおいて、活用の効果が見込める点について指摘されました。こうした業界では、感染リスクを抑えながら、経済的な観点からの再開も求められているため、接触確認アプリの利用促進を自主規制ガイドラインに含めるなどしながら進め、事業者と利用者の行動変容を促していくことへの期待も示されました。
そのほか、全国の一部の自治体では、QRコードを活用して、公共施設や飲食店で感染者が出た場合に、同じ時間帯に訪れた人などに通知する取り組みも開始されており、政府が提供するこの接触確認アプリとの補完関係をうまく構築できれば、より効果的な使い方ができるのでは、というコメントがなされました。さらに、今後は世界的な人の移動への制限を解いていくために、現在各国で進められている接触確認アプリに類似するシステムとのインターオペラビリティ(相互運用性)について検討が求められることも指摘されました。
ライブ配信の視聴者からは、接触アプリを利用することや、感染した人がその事実をアプリに申告することへのインセンティブ設計の必要性などについて質問が寄せられました。この点においては、まず接触確認アプリからの感染者との接触通知を、医療機関受診の目安として周知させることで、人々の生活上の不安を解消したり、通知を受けた人が、スムーズに受診できるような体制づくりに活用が期待されることが挙げられました。また、今後再開が本格化する企業活動や国際的な人々の移動に向けて、新たなトラスト(信頼関係)が求められるなかで、接触確認アプリをはじめとするICT技術やデータ利活用の貢献分野への期待が述べられました。
セッションの最後には、モデレーターを務めたクロサカタツヤ氏から、今後この接触確認アプリの機能や特徴についての解説文書の改訂と公開について、登壇者とともに進めていくことへの提案がなされました。今後、早期の文書公開が目指されることが合意され、セッションは終了となりました。
GLOCOM六本木会議オンラインでは、今後も継続して、旬なテーマをピックアップし、セッションを開催してまいります。各回のセッションの収録動画は、Youtubeチャンネルにアップし、アーカイブ化することで、いつでもご覧いただけます。
また、GLOCOM六本木会議ウェブサイト(https://roppongi-kaigi.org/)より、事前参加登録をされた皆さまには、Zoomウェビナーを介してライブでもご視聴いただけるほか、チャット機能を通じたご意見・ご質問を承ってまいります。